平安の遊び@まいぶん―「毬杖」の巻―
2024-03-18
今年の大河ドラマ「光る君へ」の影響で、世の中の平安時代への関心が高まってきているように感じます。平安時代初めにできた胆沢城を紹介している当センターとしても、たくさんの人に当時の生活や文化を知ってもらうチャンスだと思っています。
ところで、「光る君へ」では、「偏つぎ」や「盤すごろく」など、当時の様々な遊びも描かれています。そして、当センターでも、「平安の遊び体験」と題して、当時の遊びを体験できるイベントを開催してきました。
そこで今回のブログでは、「平安の遊び体験」で行った遊びの中から、「毬杖(ぎっちょう)」という遊びを、道具製作の裏話とあわせて紹介したいと思います。
毬杖は、先端に横長の部分がついた杖(アイスホッケーのスティックが比較的近いでしょうか)を使い、地面でボール(毬)を打ち合う遊びです。道具は木製で、遺跡から出土することもあり、県内では平泉の柳之御所遺跡から毬が見つかっています。また、毬杖は正月の行事だったようで、『年中行事絵巻』には、正月の京の都で、庶民の子どもたちに大人がまじって毬杖を楽しむ様子が描かれています。
ですが、平安時代当時のルールについては、記録が残っていないためわかりません。センターのイベントでは、2チームに分かれて毬を打ち合い、毬が相手コート後方のラインを越えたら得点という対戦形式で行いましたが、ラリーを続けるだけでも十分楽しめます。
さて、この毬杖をセンターで行うにあたって、当然ながら専用の道具は市販されていないので、自前で毬と杖を用意する必要がありました。会場は胆沢城跡歴史公園かセンター研修室の予定だったので、毬には転がりがよく、かつ飛びすぎず、また、あたってもケガや破損がないようにと、ペット用のボールと新聞紙を丸めたボールの2種類を用意しました。
問題は杖の方です。まずは材料となる木を調達する必要があります。花粉が飛び交う春先、枝落としを終えたZアリーナへそれらしい形のものを集めに行ったのですが、これがなかなか見つかりません。それでも探し回って、なんとか必要な数を(少々妥協しながら)揃えることができました。材料の木が用意できたら、樹皮を鉈や小刀で剥ぎ、それをさらにやすりがけします。そして最後にニスを塗って完成です。
このたびセンターでは、今回紹介した毬杖も含めて、「平安の遊び」道具の貸し出しを新しく始めました(体験はセンター/胆沢城跡歴史公園内に限ります)。無料で利用できますので、ぜひ気軽に体験してもらい、楽しみながら当時の雰囲気を感じてほしいと思います。
(文:専門学芸員 大堀秀人)
参考
『国史大辞典 第4巻(き~く)』(「ぎっちょう」の項、鈴木敬三執筆)吉川弘文館、1984年
『岩手県立平泉世界遺産ガイダンスセンターガイドブック』岩手県立平泉世界遺産ガイダンスセンター、2022年