鎮守府胆沢城と「うまゆみ」
2023-09-14
9月30日(土)に、胆沢城跡歴史公園にて「胆沢城平安感謝祭」を開催します。平安感謝祭では1日中、様々なイベントを用意しているのですが、その1つに「流鏑馬体験」があります。流鏑馬といえば、馬に乗って弓を射る武芸です。実は、歴史公園でこうした企画をしたのには、それなりに理由があります。
平安時代、鎮守府胆沢城では正月と5月の2節が行われていたことが文献史料にみえます。このうちの5月の節というのは、5月5日の端午(たんご)の節のことです。この日、朝廷では、菖蒲が献上され、近衛府(このえふ)の武官が「騎射(うまゆみ/きしゃ)」、つまり騎馬での弓技を披露しました。こうしたことから、鎮守府胆沢城で行われた端午の節でも、朝廷儀式に対応する内容が実施されたのではないか、と想定されています。
そういったことで、胆沢城跡歴史公園のイベントでも、馬に乗って弓を射る流鏑馬をしてみたらどうか、と考えたのでした。もっとも、流鏑馬は中世の武士が武芸の訓練のために始めたもので、胆沢城の時代とは少しずれますが、流鏑馬が「騎射」の1つであることは間違いありません。
ちなみに、古代東北の蝦夷たちは「弓馬」に優れていたことが文献史料にみえますが、鎮守府胆沢城で端午の節が祝われた背景には、彼らの「弓馬」の文化・腕前が関係しているのでは、と考える説もあります。
胆沢城平安感謝祭では、しずくいしYU-YUファーム様にご協力いただき、流鏑馬体験を実施します(詳細はチラシをご覧ください)。私としても、センターとしても初めての試みなので、とてもドキドキしておりますが、皆様に楽しみながら歴史文化に触れあってもらえる良い機会になるよう、頑張って準備したいと思います。
(文:専門学芸員 大堀秀人)
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