歴史公園花の宴【春~初夏編】
2022-06-15
胆沢城跡歴史公園には、24種類の花木が植えられており、散策に来た人の目を楽しませてくれます。今回のブログでは、歴史公園の植栽整備事情をご紹介するとともに、春から初夏にかけて公園を彩った草花の写真をお見せします。 |
胆沢城跡歴史公園の遺構整備は、できる限り当時の姿に近付けるため、発掘調査の成果に基づきながら、文献資料の記述や絵画資料なども参考にしてつくられています。しかし、それだけでなく、実は歴史公園に植えられている植栽にも相当のこだわりがあります。
そのこだわりの中でも設計の軸となったのは、遺構整備で古代の様相を復元したのと同様、当時植生していた樹種を選び、古代の原風景を再現することです。では、どうすれば1,000年以上前のこの地に生えていた植物が分かるのでしょうか。
遺跡を発掘調査すると木製品が見つかることがありますが、こうしたものに多用された用材は比較的手近に生えていた樹木と考えられるので、その樹種を調べることで当時の植生状況を知る手がかりが得られます。また、採取した遺構土壌に含まれている花粉を分析することでも、当時生えていた植物が分かります。胆沢城跡の場合、木製品の樹種識別ではスギ、ケヤキ、クリが使用されていたことが判明しており、花粉分析では、マツ、スギ、クルミ、クリ、ハンノキ、ブナ、コナラ、ケヤキ、トチノキ、モミジ等のカエデ属(イタヤカエデ、ヤマモミジ)などの花粉が確認されています。この内、赤太字にしたものは歴史公園に植えられています。
これに加え、歴史公園には木の実拾いや収穫が楽しめるもの(ヤマグワ、ガマズミ、ウメモドキ…)、花や紅葉などの彩りが楽しめるもの(オオヤマザクラ、ヤマブキ、シモツケ…)なども植えられています。基本的には本地域に自生可能で、かつ日本原産の樹種が選定されています。
以下、春から初夏にかけて歴史公園を彩った草花の写真をいくつかお見せいたします。これから見頃を迎える植栽もあるので、是非足をお運びいただければと思います。
〈参考〉
『国指定史跡胆沢城跡第Ⅰ期外郭南門地区保存整備事業報告書』(奥州市教育委員会、2020年)
(文:専門学芸員 大堀秀人) ※禁無断転載